2014年11月18日火曜日

ひとつ前の記事に大きな間違いが

ごめんなさい訂正です。

ひとつ前の記事、Philip M. Stahlの著書であるとしていたのですが、これは間違いでした。
Stahlの本は国内の図書館にはなくて、でもペーパーバックになったくらい売れたらしく(へえ)
いま取り寄せています。
ただどういうわけか遅着の連絡が入ってるので、まだしばし読めそうにありません。
キンドル版のほうが安くかつ早いのですが、
デジタルデバイドなしゃけ父でございます。
Padのたぐいはいまいち使えてないのでございます。

なんにしても、お恥ずかしい限りです。
ご迷惑をおかけいたしました、お詫びして訂正いたします。
正しくは

Rohrbaugh JB, A Comprehensive Guide to Child Custody Evaluations: Mental Health and Legal Perspectives, Springer, 2008
でした。


m(__)m しゃけ父

2014年11月9日日曜日

Rohrbaugh によるマニュアル、19章の抄訳 (完了)

Philip M. Stahl、Conducting Child Custody Evaluations、SAGE Publications, Inc (2010)

##### ↑ これ取り違えでした、申し訳ないです。
正しくは、
Rohrbaugh JB, A Comprehensive Guide to Child Custody Evaluations: Mental Health and Legal Perspectives, Springer, 2008
こちらになります。

19章 親による子どもの誘拐

原文の雑なPDFはここ
Word版ダウンロード 

親権評価者はときに、片方の親からこう訴えられることがある。いわく、相手方が面会の際に時間通りに子どもを返さない、または「州を超えて連れ去って返さないぞ」と脅す。こうした主張を評価するためにも、親による子どもの誘拐の特徴、リスク、心理的な影響を理解することが重要である。

定義と頻度

親による子どもの誘拐(拉致、かどわかし、親権の妨害などとも標記される)とは、親や家族が子どもと面会する権利ないし親権に反して、子どもを取りあげ、引き離し続け、あるいは隠すことと定義される。研究上または実務上、これらは軽度(広い意味での誘拐)と重度(操作対象になる)に分けられる(Chiancone, 2001)。

軽度

年間に354,100件の、
親権の合意、法令、そのほかに違反して子どもを連れ去る
法令で決められた、ないし合意した時間を過ぎても子どもを返さずに、一晩以上戻さない
事件が起きる。

重度

年間に203,900件、次にあげる項目に一つ以上あてはまる事件が起きる。
・子どもを連れ去ったことまたは居場所を秘匿する(44%)
・州外に連れだし、連れ戻すことを困難にする(17%)
・一方の親に会わせまいとする(76%)
・監護状況を永続的に変えようとする(82%)

ここで注意したいのは、ほとんど半分(46%)のケースで、残された親は子どもがどこにいるのかを知っているか、誘拐の状況を知らされていないことだ。そこで、これら親たちは、子どもが行方不明になっていると認識しないことがある。4割ほどの親は、様々な理由から、この誘拐に関して警察に連絡していない。この消極的な態度もある程度は理解できる、なぜなら多くの警察署はこれらの案件を自分たちでは処理せず、地裁やその他の機関へと行くように指示するからだ。

誘拐された子どもたちは、かなりまちまちな期間、親と引き離される。一日以内(23%)、一週間以内(46%)、ないし一ヶ月以上(21%)。この1999年の全米調査の前までに、94%は返されている(Hammer, Finkelhor & Sediak, 2002)。

誘拐される子どもの特徴

年齢

2-3歳の子が最も誘拐されやすい。かれらは運びやすく、隠しやすく、言葉で抗議することも少なく、自分たちの情報を他の人に説明できない(Johnston & Girdner, 2001)。全米調査では、44%の誘拐された子どもは6歳以下で、79%が11歳以下だった(Hammerら 2002)。

性別

男児も女児も同程度に誘拐される(Hammerら 2002)。

人種

人種による偏りはない(Hammerら 2002)。

誘拐する親の特徴

誘拐がおきる家庭は親同士の葛藤が強い状態で、その半分が別居から離婚への過程である(Chiancone, 2001)。実際、親権の評価中に誘拐が起きることは多く、実際、単発・くりかえしの誘拐が、裁判所が調査を命ずる理由であったりする。そこで、誘拐が懸念されるハイリスクな家庭を見つけ出すことは重要である。

誘拐は様々な人々が起こすが、研究によって、その間に共通性が見つかっている。まずそれら共通性をひとつずつ説明し、6パターンの誘拐親のプロファイルにそれらがどう関わるかを見る。そしてこれら研究が指摘する誘拐の危険因子について解説する。

他方の親への態度

誘拐親は、他方の親の子どもにたいしての価値を否定したり無視したりしがちである。 なぜ、他方の親と親業を分担すべきなのかを、認めようとはしない。 (Johnston & Girdner, 2001)。

誘拐の動機

誘拐親の一部は、より裁判に有利な州を探して、あちこちへ移りまわる(米国では州ごとに司法も法も独立しているから)。これは全米で統一のUC-CJEA法(2002年)や、その前身のPKPA法(1980年)が全ての州で批准されるまで流行していた。

誘拐親の一部は、復縁を迫るないしやりなおす意図をもっていて、別の親は残された親を罰したり傷つける目的をもち、また別の親は親権や面会の権利を失うことを恐れている。ひどいケースでは、誘拐親はパラノイア性妄想をもっていて、残された片親の悪い・恐ろしい性質を信じこんでいたり、法をまったく無視するパーソナリティ障害をもっている(Chiancone, 2001)。

一部の誘拐親は、子どものことを気遣っていて、残された親からの虐待やセクハラ、遺棄などから保護しようとしている。実際25-50%の誘拐のケースで、児童虐待やDVの主張がある。これらの主張は連れ去り親がすることが多いが、残された親から、または両方からということもある。

DV

誘拐が子どもの保護のためだったという訴えは頻繁になされるが、しかしこれが正しいものとも限らない。誘拐者は、残された親よりももっと暴力的であり得る。たとえば75%の誘拐父と25%の誘拐母は、暴力的な行動をとったことがある(Grief & Hegar, 1993)。より高いDVのレベルが誘拐を誘発するわけではない;Johnston(1994)はDVのレベルが、誘拐があった家庭と、激しい法廷闘争をしている家庭で違わないことを報告している。

就労状態と社会的な地位

カリフォルニア州での50の誘拐家庭と、57の誘拐はないものの激しく対立している離婚家庭を比較することで、JohnstonとGirdner(2001)は貧困に関連した一群の因子をみつけだした。誘拐親はより貧困で、失業していて、若く、未婚で、小さい子をもち、犯罪歴をもつ傾向があった。誘拐親は経済的・精神的な支援を海外から受けている傾向があり、これは誘拐親のなかに、移住してきてからの日が浅い人が含まれがちであることを示唆している。海外からの支援はさらに、誘拐が異文化間結婚や国際結婚で起きがちであることとも関連するだろう(Chiancone, 2001)。

JohnstonとGirdner(2001)はまた、ほとんどのカリフォルニア州の誘拐親が、それが法律やモラルに反する行為だとは考えず、その行いを法務長官のオフィスに関わるようになってからでさえ変えようとはしないことを発見した。

誘拐を支援する人々

ほとんどの誘拐親は社会的なネットワークによるサポートを受けている。家族、友人、社会的なコミュニティ、 カルト的なグループ、反社会的な地下組織。このサポートは実務的なサポート(金、食料、宿) にかぎらず、誘拐という違法性の高い行動を正当づける動機やモラルのサポートにもおよぶ(Johnston & Girdner, 2001)。

性別と子どもとの関係

全米の調査では、誘拐親の2/3が父である(Hammer ら2001)。子どもとの関係は
・生物学的な父    53%
・生物学的な母    25%
・祖父母       14%
・きょうだい、おじおば、母の愛人    6%

カリフォルニア州の研究で、JohnstonとGirdner(2001)はそれぞれ父母ともに同程度に誘拐をするが、タイミングが異なることを発見した。父は何の親権の決定もされていないとき、母はそれが裁判の問題として扱われてから、誘拐する傾向があった。

誘拐の場所と季節

63%のの誘拐が、誘拐親が適法な状態で子どもを監護しているときに起きる。つまり、定められた時間内に子どもを返しそこなった場合である。子どもたちはその誘拐のまえ、家か庭にいる(36%)か、だれかの家か庭にいる(37%)。子どもが学校やデイケア(7%)や公共の場所(8%)から誘拐されるのは珍しいことだ。35%の誘拐は6,7,8月におきている。これはおそらく、子どもが夏のあいだを非監護親と過ごし、夏の休暇にでることと関係するのだろう。

子どもを誘拐する親のプロファイルと危険性

プロファイル1 予告または実際の誘拐があった場合

 誘拐を疑う証拠がある場合、ないし誘拐の前歴がある場合、逆に面会を行わない場合には、リスクは高い。
そのほかのリスクファクターは
・その親が失業している、ホームレスである、地域との情緒的・経済的な絆がない
・誘拐をするための準備があること、協力者の存在
・預金を引き出す、金を借りる

この場合、裁判所は特別な介入をしなければならない。

裁判所による命令 監護親の指定、面会交流の詳細な時間、受け渡しの日付と場所の指定。監護親に、どの裁判所がどの管轄を取り仕切っているかの情報を、他方の親がそこのエリアから出てしまうまでに教えておくこと。命令は、その条項に違反したときにどう扱われるかまで明示すべきこと。両親はそれぞれその親権に関する命令書のコピーを常に携帯すべきこと。

パスポート 裁判所の命令は、パスポートと出生証明書の発行機関に提示することができる。両親ないし裁判所がそれを認める書類を提出しないかぎり、その親がそれらを発行しようとした際には、親権をもつ親に通告するように願いでることができる。その子どものパスポートにも、その旨の許可が必要であることを明記できる。それら子どもと両親のパスポートは、中立な第三者に預からせることができる。

抵当 裁判所は、それら親子が休暇のために米国を離れる際には、抵当を請求できる。

通知 親権に関する命令のコピーを、学校の関係者、デイケアの施設、医療関係者に、子どもを引き渡さないこと他、どんな子どもと非監護親のことをふくめ、通知されるべきである。

刑事責任 誘拐を幇助・教唆する親戚やそのほかの人々に、刑事責任について警告されるべきである。もしかれらが幇助・教唆したときはほとんどの州で重罪になる。

監視つき面会交流 たいへん厳しく、お金もかかるが、くりかえしておきる重度の誘拐の際には用いられる。

プロファイル2 誘拐親が、児童虐待があったことを確信していて、社会的なサポートがある場合

もし親が、虐待がおきていたことを信じこんでいてそれがこれからも起きると思い込んでいる時、親は子どもを救わねばいけないと思うだろう。これらの親は、裁判所の人々がかれらの訴えを真面目に聞かないとおもったり、あるいは調べるのに失敗していると思うだろう。しばしばこれらの親には支援者がいて、支援者は自分たちの利益のために動く――それは家族のだれかだったり、親が新しい身分を手にいれるのを手助けし隠れ場所を提供する地下組織などだったりする。
こうしたケースへの介入は、子どもたちを虐待と誘拐の両方から保護せねばならない。

・介入 慎重で丁寧な調査は、訴えている親を安心させ、落ち着かせるだろう。

・監視 訴えられている親(おそらく問題はないとき)を守り、子どもを虐待から護るために、調査中の面会交流には監視をつけるべきである。これは子どもがとても小さくて、親の訪問を怖がっているときにも有効である。

・里親 もしどちらの親やその家族ともに重篤な精神疾患であると診断されたときは、調査中は子どもは中立な第三者がみるべきである。その際、面会は監視つきでおこなうべきだ。

プロファイル3 片親が妄想性パラノイド障害の場合

この診断は珍しい(訳注)が、これに該当する親は通常もっとも危険で恐ろしい誘拐者になる、とくにDVの前科があったり、精神病歴があったり、児童虐待の前歴がある場合は。 通常かれらは離婚によって打ちのめされていて、相手方からひどい扱いをうけたり搾取されたと信じこんでいる。 復縁を望んでいたり、逆に復讐を夢想していることもある。このプロファイルでは、片親がはなはだしいパラノイドを示し、配偶者に道理のない信じこみや行動をし、あるいは配偶者に病的な妄想を抱く。配偶者が自分自身や子どもを傷つけるか、その計画をもっていると訴える。病的な親は、子どもを一個の人間だとは認識していない。むしろ、自分と融合した被害者として扱う(このとき、一方的な判断で子どもを救おうとする)か、憎むべき相手方の一部として見る(このとき、突然に遺棄したり殺害したりする)。 こうした極端なケースでは、介入は子どもと、精神病的でない親の保護に焦点をあてる。

・監視つき面会 精神病的な親には特に安全に配慮した施設を用い、とくに子どもとの関係は綿密にモニターしながら行う。

・面会の一時休止 病的な親が次のことをくりかえして面会のルールに違反するときは中断するべきだ。(1)他方の親を侮蔑すること(2)子どもや相手方の情報を集めようとすること(3)子どもを脅したり、物理的に傷つけること

・安全なプラン 監護親は、重大なDVのケースと同様に、安全な面会のプランの策定のために手助けを必要とするだろう。

監護親が精神障害者である場合は、その状況はより危険である、訴訟や親権の調査のプロセスは誘拐や暴力を引き起こす可能性があるからだ。そこで次のことが必用になるだろう。
・裁判所の命令 による緊急の精神病の調査

・一方だけの聴取 (精神病的な親には知らせないで)精神病と親権の詳細な調査が終わるまでのあいだ、子どもを一時的に監護するために

・守秘義務の破棄 関係する全ての専門家とこのケースについての情報を共有するために

訴訟後見人、調査官、ペアレンタル・コーディネーター による家族の監視と、裁判所の命令が実行されていることの確認が必用になるだろう。

プロファイル4 誘拐親が深刻な反社会性障害である場合

もうひとつの少ないケース(訳注)反社会性障害の親は、あらゆる権威――司法システムも含む――を軽蔑してきた経歴と、法律をやぶることに特徴がある。 彼らの他者への関係はいつも利己的・搾取的であり、相手を操ろうとする。 彼らは、自身がより優れていて、そう考えるべき資格をもっているという大げさな信念をもっていて、 他者をコントロールする一方的な欲求をもっている。 妄想性パラノイド障害の場合と同じく、反社会性障害の親も子どもを、自分とはことなる願いや権利をもった人間だとは考えない。 その結果、彼らはしばしば子どもを、明らかに復習の手段、罰、ないし配偶者からの戦利品として扱う。彼らは誘拐やDVを刑罰の一種であると考える。

この状態の親への介入は、かつてのパートナーと子どもを保護することに焦点をあてる必用がある。

・面会交流 これは中断するか、監視つきにすべきだ。

・懲罰 親権にたいする命令に違反があれば、罰金や懲役を科すべきである。

・守秘義務があるセラピー療法を避ける もともとこの患者はセラピーに必用な、カウンセラーとの関係をつくることができない。むしろ、守秘義務を逆手につかって、他人(カウンセラーを含む)を支配しようとする。

・ペアレンタル・コーディネーター による長期間の家族の監視が必用である。

(訳注) このもとになったJohnstonらの調査結果によると、70サンプルのなかの3件ずつが、妄想性パラノイド障害と反社会性障害にそれぞれ当てはまっていた(4%)。これをもとにして二項分布モデルで信頼区間を推定すると、罹病率の95%信頼域は1から12%の間である。ちなみに、より新しい精神病のマニュアル(DSM-5)は、一般の人々のなかに、それぞれ数%ずつの罹病率を推定している。また高葛藤な夫婦を調査したJohnstonの別の研究では、2/3という高率でパーソナリティ障害が観察されている。調査方法によって罹病率の推定値は変わるが、こうした集団のなかではこのような疾病はさほど稀なものではないだろう。またDSM-5では、反社会性障害患者がかならずしも法に触れないことを紹介している。前科を持つものも多いが、必須の要素ではない。

プロファイル5 異文化間の結婚の場合

異文化間の婚姻をした親たちは、別居と離婚過程の精神的な支えとして、彼らの民族ないし宗教のルーツに帰りたがることがある。国外にいる大家族と深いつながりがある親が深く悩んでいるとき、子どもをその出自の文化のなかで養育するように試みることがある。

もちろん、全ての異文化結婚の親が誘拐を試みるわけではない。こうしたリスクがあるのは(1)出自の文化、地元、家族を過度に理想化する(2)米国の文化に反対する(3)子どもの多文化な立場を認めない親である。もしその親の出自が「国際的な子の奪取の民事面に関する条約」(ハーグ条約)に加盟していないとき、子どもを取り戻すのは、不可能ではないにしても困難である。(以下、米国内の事情であるので省略)

プロファイル6 司法によって疎外されている親

JohnstonとGridnerは、親が米国の司法によって不当に人権を損なわれていると考え、親族が家族問題を解決しようとしているとき、誘拐が起きやすいことを発見した。

・貧困と低学歴 38%の親は貧困で、低学歴で、親権や誘拐に関する法的知識を欠き、親権の訴訟を正常におこなわしむる法的な説明も精神的なカウンセリングも受け付けない。

・犯罪歴 50%の誘拐親と40%の残された親には逮捕歴があり、家裁がかれらの窮状に対応してくれるとは考えていない。

・男女同権の法律への反発 なんらかの民族、宗教、分化のグループに属する親は、子どもは母とその親族が世話をするべきだと考えている。

・DV被害者 DV被害者は誘拐をするリスクがある、とりわけ、裁判所が彼らを保護しなかった場合に(訳注)。彼らが誘拐をした場合、加害者はそのことを強調して、DVについて印象を弱めようとし、また被害者をコントロールしようと企むだろう。

・司法から疎外されている親への介入 そのほかの、社会的・経済的に不利な状態にある親と同様に、焦点は教育と公共サービスにある:
法的な相談と弁護
信頼できる精神的なカウンセリング
公共サービスにつなぐ助言
関係する家族と社会的ネットワーク もまた短期間の介入対象となるべきである。

(訳注) DVが誘拐を惹起するというこの推定は、先に述べられたJohnstonらの調査結果では確認されていない。

親による誘拐の危険因子

以下に、誘拐がおきる可能性が高まるファクターについてまとめる。これらを使って考えるにあたって、 親権あらそいの際に、虚偽の誘拐が、虚偽の児童虐待や虚偽のDVと同じように訴えられる可能性を心に留め置くこと。 よりたくさんの因子があれば実際に誘拐するとは限らないし、それがおこったとも限らない。これらは可能性を示している、 それを念頭におきながら、ケースごとに詳細を調べていくべきだ。

ボックス73
誘拐の危険因子

誘拐親の特徴
・他方の親を、子どもに無価値か、脅威だと考える
・他方の親にたいして不合理で病的な妄想を抱く
・反社会性障害―あらゆる権威を侮蔑する
・社会との経済的・情緒的なつながりをあまり持たない
  就業していない・ホームレスである
  貧しく低学歴である
  若い
  未婚
  犯罪歴
・別の地域ないし国とのつながりと支援
・男女同権への反発
・誘拐への支援の存在
誘拐される子どもの特徴
・6歳以下
・男女を問わない
・人種と民族を問わない
状況の因子
・子どもへの性的ないじめの主張
・DVの主張
・異文化間の婚姻
・誘拐の計画や脅し
・預金の移動、引き出し、借金
・子どものパスポートの発行ないし隠匿
(ボックス ここまで)

誘拐による心理的な打撃

誘拐や、誘拐するという脅しは、家族システムに混乱を招く(または、誘拐は混乱の帰結でもある)。 予定した時間を守らない親をもつ子どもはしばしば、恐れ・怒り・混乱を抱えている。 多くのこうした親は他方の親を口汚く非難し、別の親と会ったり話したりできないように脅したり、その親のもとに返さなかったり、監護に関する他の約束も反故にしたりする。 連れ去られた親もひどい不安・激怒・恐怖・抑うつを経験しながら、たいへん怒っている。

もっともよく見られる違反は、一時間か二時間の遅れか、または家族の記念日や祝日への子どもの参加の制限である。 これらの違反は、法的・研究上の誘拐の定義である、一晩より長いもの(Chiancone, 2001)に比べれば軽度である。しかし 1999年のNISMART-2研究ではもっと厳しい定義「連れ去って手元に置くことに、隠す・闘う・法でみとめられた権利を損なわせる意図があること」 (Hummer ら2002)とされている。誘拐が精神的にあたえる衝撃は、誘拐に力が使われる、子どもが隠される、誘拐が長期にわたることでより大きくなる (Chiancone, 2001)。

誘拐された子ども

複数の研究で、誘拐されてから監護親のもとに戻された子どもの精神的な適応を調べている(Chiancone, 2001)。 これらの研究は、全ての子どもたちになんらかのトラウマがあったが、特に長期にわたる誘拐で、ずっと悪い影響があった。 1.長期にわたる誘拐の被害者は、居場所を特定されないために転々としていたため、不安定な生活を余儀なくされている。 2.数週間以内であれば、子どもたちは元にもどれるという希望を捨てずにすむので、この経験を冒険の一種とかんがえることができ、誘拐親にたいして過剰な忠誠心を抱くことがない。 3.小さい子どもは徐々に残された親のことを忘れるが、大きな子どもは混乱し、両方の親を憎むようになる――誘拐親にたいしては、他方の親と引き離したことにたいして、そして残された親にたいしては、救いだせなかったことにたいして。

誘拐された、あるいはその脅迫を受けてきた子どもの精神病理的な調査によると、子どもは残された親に対して悲痛と憤怒を経験し、 不安を含む抑うつや、摂食障害、睡眠障害、泣き叫び、気分変動、病力的行為、恐怖の兆候を示す。ほかの誘拐のトラウマとしては、人を信じられないこと (特に権威ある大人、親戚にたいして)と社会的な引きこもり、同僚との関係が希薄になること、抑うつ(親指をしゃぶる・執着行動)、 大人との親密な関係をつくるのが困難になることが含まれる。

誘拐された子どものトラウマのひどさは、子どもの日常が損なわれた度合い、何が起きているかをどれくらい認識しているか、 親間の葛藤の度合いと関係する。先の2つの因子は子どもの年齢と関連する;より年齢がたかいほど、よりトラウマになりやすい。 (訳注) 男の子のほうがより適応が悪くなることも知られている。

残された親

子どもを誘拐された親もトラウマを受ける(Chiancone, 2001)。彼らの多くはよく眠れず、喪失感と激怒を経験する。 約半数は食欲をなくし、不安、深刻な孤独を感じる。こうした状態は、子どもが帰ってからもより強くなることがある。 子どもとの再統合はストレスフルである。また親は再び誘拐されることを恐れる。

残された親は経済的な痛手も負う、子どもを取り戻すコストが高いからだ。15年前は子どもを探すのにかかる平均的な費用は 国内なら8千ドル、国外なら27千ドルだった。現在はもっとかかるだろう。あらゆる所得階層で、親は最低でも彼らの年収分の費用を支払わねばならない(Chiancone, 2001)。