2014年10月18日土曜日

Johonston and Edwards 2002の、親による子どもの誘拐について

ちょっと面白い論文で、Johnstonさんは例の葛藤のスペシャリストなんだけど、
それが「親による子どもの誘拐 法の歴史、リスクの概要、防止するための仲介」ってのを
後に書いている。これが入手できた。

Parental kidnapping Legal history, profiles of risk, and preventing interventions
Child Adosese Psychiatric Clin N Am 11(2002)805-822

Johnstonさんはもともと、どちらかというと母親側の立場でものを書いていたようにおもう。
それがこれを書いたのは、父親が連れ去るケースがでてきたからかな(うがちすぎ?)
あるいは、葛藤親のなかで、なにかが明らかに違うって感じたからかもしれない。
それまでの葛藤の議論の際に、こうしたケースは念頭になかったのだろう。
だから日本の場合(やたら連れ去りが多い)は、なんていうか、彼女のなかでは
例外だったのかもしれない。

まあともかく、この論文でそこに向き合ったわけだ。
というか、向かい合わざるをえなくなったのだろう。だって、アメリカでその件数がすごく多いのだ。
それが違法になったのは1980年から(州によっては1969年から1983年)。
厳しくなったのが1992年くらいから。 でも、犯罪になったとしても検挙率が低いからかもしれない。
日本だって、いきなり逮捕できないと、かなり強引な連れ去りでも検挙されないからなあ。

まあともかく、これはもうはっきり問題であるとしている。
表題のリスクは、誘拐されるリスクという意味。
誘拐がこどもに与える影響のリスクって意味じゃない。

そりゃそうだ。

そこから一部だけ紹介。
誘拐親に共通する特徴
誘拐親は、他方の親の子どもにたいしての価値を否定したり無視したりしがちである。
この傾向は、長く親権の係争が続いている親たちよりも、誘拐親のほうがより強い。
誘拐親は誰よりも自分こそが、子どもの利益についてよく知っていると信じている。
誘拐親は、どうやって、またはなぜ、他方の親と親業を分担すべきなのかを考えようとしない。

誘拐親は、より小さい子を連れている(平均年齢は2-3歳である)。
こうした子どもは移送しやすいし、隠しやすい。言葉で抗議することができないし、
自分の名前や、特定するための情報を他人に伝えることができない。
親権の裁定に逆らって連れ去られているもっと大きい子は、
特に影響にたいして弱い子であるか、
誘拐親と共犯関係にある。

ほとんどの誘拐親(パラノイアである特徴がみられる場合を除く)は
社会的なネットワークによるサポートを受けている。家族、友人、社会的なコミュニティ、
カルト的なグループ、反社会的な地下組織。このサポートは実務的なサポート(金、食料、宿)
にかぎらず、誘拐という超法規的な行動を正当づける動機やモラルのサポートにもおよぶ。
この支援者たちは、司法の介入があった後でも、その行為が違法ないしモラルに反することだとは考えない。

父も母も誘拐親になり得る、頻度は異なるが。父親は親権が決定する前に、母親は親権が決定してから連れ去る。


日本の状況に近いところも遠いところもありそうながら。
他方の親の無視と、サポートがあるってのは日本でもそうだろうな。
日本の場合は司法が強力にサポートしてる。

ちなみに特に影響にたいして弱い子のケースを二人組精神病という。PAの症状のひとつですね。
子どもが特に弱いんじゃなくて、そういう親がひどいんだと、私は思う。


このあとにプロファイルを6種類くらいのせてる。

そのうちのひとつが、誘拐親が妄想性パラノイド障害の場合。
これはサンプルの4%以下しかないというが、そのくらいはあるみたい。
日本のでこじれてる場合、けっこう当てはまりそう。
子どもの連れ去りの危険が高いという。 
  連れ去りの危険っていうくらいだから、連れ去りがやばいものだという認識はあるわけだ。
この親は子どもをじぶんと別人格のものだという認識がないのに注意と。
子殺しや心中の可能性も指摘している。

もうひとつは、誘拐親が深刻な反社会性障害である場合。
こうした親たちも、子どもが自分の権利を持っていることを認めない。
子どもたちを、かつてのパートナーとの戦いのトロフィーであるかのように考えている。
復習の手段にも使う。
これもサンプルの4%くらい存在した。

ちなみにサンプルは50家族から70人の親(父母が半々)、1987-90年のカリフォルニアである。


なんにせよ、2002年になって、Johnstonさんは誘拐を認識し、
それが酷い行為であると表明するようになった。
それは単なる高葛藤とはわけがちがうことを、ここで認識したことになる。

プロファイル1 予告または実際の誘拐があった場合
 誘拐を疑う証拠がある場合、ないし誘拐の前歴がある場合には、リスクは高い。そのほかのリスクファクターは
・親が失業している、ホームレスである、地域との情緒的・経済的な絆がない
・誘拐を匂わす発言、協力者の存在
・預金を引き出す、金を借りる

プロファイル2 誘拐親が、児童虐待があったことを確信していて、社会的なサポートがある場合

プロファイル3 片親が妄想性パラノイド障害の場合
このプロファイルでは、片親がはなはだしいパラノイドを示し、配偶者に道理のない信じこみや行動をし、あるいは配偶者に病的な妄想を抱く。
配偶者が自分自身や子どもを傷つけるか、その計画をもっていると訴える。
この思い込みや行動には、外部からの援助を必用としない;彼ら自身や子どもを守るために必用な行動をしているという確信を自らがもっている。

この診断はどちらかというと少ない(この調査の4%以下である)が、これに該当する親は通常もっとも危険で恐ろしい誘拐者になる、
とくにかつてDVの前科があったり、精神病歴があったり、児童虐待の前歴がある場合は。
通常かれらは離婚によって打ちのめされていて、相手方からひどい扱いをうけたり搾取されたと信じこんでいる。
復縁を望んでいたり、逆に復讐を夢想していることもある。

病的な親は、子どもを一個の人間だとは認識していないことに注意せねばならない。
むしろ、自分と融合した被害者として扱う(このとき、一方的な判断で子どもを救おうとする)か、
憎むべき相手方の一部として見る(このとき、突然に遺棄したり殺したりする)。
離婚や親権の確定は、これら病的な親が急に行動をおこすきっかけになる、
その結果はただ誘拐であるだけでなく、殺人や心中にいたることもある。

裁判所は、こうした親の深刻な妄想から子どもを守るためのメカニズムと方法とを持たねばならない。

プロファイル4 誘拐親が深刻な反社会性障害である場合
反社会性障害の親は、あらゆる権威――司法システムも含む――を軽蔑してきた経歴と、法律をやぶることに特徴がある。
彼らの他者への関係はいつも利己的・搾取的であり、相手を操ろうとする。
彼らは、自身がより優れていて、そう考えるべき資格をもっているという大げさな信念をもっていて、
他者をコントロールする一方的な欲求をもっている。
妄想性パラノイド障害の場合と同じく、反社会性障害の親も子どもを、自分とはことなる願いや権利をもった人間だとは考えない。
その結果、彼らはしばしば子どもを、明らかに復習の手段、罰、ないし配偶者からの戦利品として扱う。
彼らは誘拐やDVを刑罰の一種であると考える。
パラノイド障害の場合と同じく、重い反社会性障害は稀で、この調査の4%が該当した。

重度の反社会性障害の場合は、匿名での治療的な介入や家族カウンセリングは効果がなく、多くそれは危険を招く。
カウンセラーの介入の余地がなく、カウンセラーをもコントロールしようとするからだ。

プロファイル5 異文化間の結婚の場合

プロファイル6 親たちが司法によって不当に人権を損なわれていると考え、家族ないし社会からの支援をうけている場合

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