実務的共同監護権の選択を増やす
米国での監護権の決定は、歴史的に、主に社会的な影響を受けて、時間の経過とともに変化している。18世紀には、監護権はふつう父親に与えられた。彼らが家長だと考えられていたし、子どもの世話をするための経済的な基盤をもっていたからだ。19世紀には、監護権は女性に移った。この移行の理由はおそらく、少なくとも部分的には、産業革命の結果、生活費を稼ぐために父親が家から職場に出るようになったためだと考えられる。この状況で女性は、男性が仕事に行っている間、子どもの主たる養育者として世話をする必要があった。この状況下で、児童発達の理論家も母と子の関係の重要性に着目し、子供が母親の親権下にいるほうが良いのではないかと(根拠なく)考えていた。ところが最近では、共働き家庭が普通になり、子の養育に両親がかかわる重要性が強調されてきた。こうした変更は、両親との関係を維持することの重要性を強調する現在の法律に反映されている(66)。事実として、現在は多くの州で選択できるようになった、実質のともなう共同監護(実務的共同監護)を選ぶ親が増えている(59)。実務的共同監護は、両方の親が法的な権利と義務を有し、両親ともに子供とかなりの時間を過ごせるように意図している。より一般的な、法的共同監護は、両親への法律上の権利と責任を与えるが、子供はどちらか一方の親とだけ住んでいる(66)。法的共同監護は、子供たちの人生に両親が関与できるという範囲で利点がある。しかし、研究によると、親の収入、教育、離婚前の親の状況を揃えた上で比較した場合、法的共同監護と母親の単独監護は、父親が払う生活費・面会・子どもの重要な決定事項への関与において、実質的に変わらなかった(66, 67)。法的な共同監護には、両親が重要であるという象徴的な意味があるが、実際にはほとんど役に立っていない。
これとは対照的に、実務的共同監護は、より多い父親との接触、関与、および養育費の支払いに結びついている(68)。父親も、母親の単独監護よりも、実務的共同監護のほうがより満足するようだ。例えば、Shrierらは1991年に2つの地区での調査で、父親が養育費や経済的なサポートをするにあたって、母親の単独監護の場合よりも実務的共同監護のほうが有意により満足していることを示した。実務的共同監護がより両親に会いやすくするのなら、子どもにとっても有益であるだろう。一方、住居が不安定になることは、ある子供たちにはストレスになりえる。まだ多くの研究結果が出ていないが、いくつかは実務的共同監護がより子どもの適応につながっていると報告し(70)、別の結果は差がないと報告している(71)。
しかしながら、これらの結果は、あまりにも楽観的なイメージを与えるかもしれない。裁判所はそれを要求するカップルには、共同監護を付与する可能性が最も高い。カリフォルニア州におけるMaccoby とMnookinによる大規模な調査では、実務的共同監護を選択するカップルは、単一親の監護を選択するカップルよりも、高い教育を受け、高所得であることがわかった;さらに、比較的に敵対性が低く、父親は離婚以前から子どもによく関わっていた(66, 72)。これらの知見は、実務的共同監護が本当に効果的なのかどうかを試験する際に、擬陽性を与える可能性を示している。これらのカップルは最初から立ち位置が違うのかもしれない。
自分たちのの意思に反して実質の伴う共同監護が両親に課された場合、うまく機能するとは考えにくい。これらの条件下で、共同監護は父親と子供たちをより多く接触させるだろうが、両親間の葛藤は増えるだろう(73)。監護上の対立は比較的に珍しいが、Maccoby とMnookinは、こうした監護権の紛争を解決するために使用されていることを報告している。彼らの研究では、母親と父親がそれぞれ単独親権を求めて争ったケースの約3分の1に、共同親権が授与された。さらに、保護者の間の葛藤がより高いほど、より共同親権が付与される可能性が高かった。離婚後に三年半が経過した時点で、これらのカップルは、最初から共同親権を望んでいたどのカップルよりも、より多くの葛藤をもち、子育てではより非協力的だった。この知見は、共同親権の付与は敵対的な両親の関係を改善しないことを示している。
上述したように、研究は、両親の間で離婚後の葛藤が高い場合には、監護権を持たない親と子どもの接触は有害であることを示している。両親が葛藤の雰囲気の中にあり、実質のある共同監護が子どもと親との接触を続けさせるなら、これは益よりも害になる(74)。共同監護はだから、両親ともに協力的で、このような裁定を望んでいるときには、ベストな選択になる。しかし、親どうしが協力できない、または片親が暴力的または虐待するようなケースでは、より伝統的な監護権のあり方が好ましいであろう。
母親と父親で、どちらが監護するほうが、子どもたちの適応は良いだろうか、研究の結果は?経済的観点から考えれば、ふつうは男のほうがより稼ぐので、父親のほうが良いように期待するかもしれない。一方、ふつうは母親のほうが育児の経験を持っているので、父親よりも母親ののほうが、より有能に世話することができそうだ。母と父の世帯の子どもたちを、所得をあわせて比較した研究では、いくつかの結果は母親の監護のほうが優れており、いくつかの結果は父親のほうが優れていて、そして別の結果では、子と同性の親のほうが好ましいとされた(36)。
最近の、大規模な全国サンプルに基づく徹底した調査(Downey と Powell, 75)では、子どもたちが同性の親を持つほうが良いという考えは、ほとんど支持されなかった。いくつかの調査では、子供たちは父親の監護下でより良い成績をのこした。しかし、世帯収入を揃えた比較では、子どもたちは母親の監護のほうがやや良くなる傾向にあった。この知見は、より高収入であるなら父の単身世帯がより子どもに益であるが、母が父と同じくらい収入があるのなら、そちらのほうが有利であることを示唆している。研究の全体的な発見は、しかし、親権を持つ親の性別は、子どもの適応にはさほど大きな違いをもたらさないということだ。そこで一般的には、子供の性別に関係なく、どちらかが監護親として本質的に優れているというわけではない。
0 件のコメント:
コメントを投稿