そのほかの指標との比較
面会交流(ないし面接交渉)が対数的に増えているのはわかった。ではその他の事件数はどうだろうか?
離婚前である乙4のほかの項目のなかで、 監護権者の指定や子の引き渡しは、 面会交流とおなじペースで増加していた。 年間12ないし13%の増加、19年ほどで10倍になる。
しかし意外にも、離婚後の子どもの引き渡しに関する乙7には、こうした増加が見られない。
また養育費の請求は、2003年までは面会交流と同じペースで増加していたが、これは2004年で一応の歯止めがかかっている。
これはおそらく、2003年3月に東京・大阪養育費等研究会が発表した
「簡易迅速な養育費の算定を目指して-養育費・婚姻費用の算定方式と算定表の提案」(判例タイムス1111号)が、
迅速に受け入れられて、水準として機能したからだろうと推察される。
これによって、不要な紛争が、未然に防止されているのだろう。
調停はどのくらい役立っているのだろうか?
乙7では、だいたい、調停の新受件数のうち26%くらいが審判に移行するようだ(最近は上昇傾向)。(当年度の審判の新受件数)/(前年度の調停の新受件数) で推定
面会交流は17%くらい。養育費請求は13%くらいなので、水準があると調停作業が捗ることがわかる。
もっともこの数年、ことに2012年は、養育費請求が審判に移行する割合が目立って増えている。
日本弁護士連合会から、算定表の見直しの意見書が出されたので、
この水準にチャレンジするケースが増加しているのかもしれない。
ちなみに、子の引き渡しと監護者指定に関しては、調停と審判ではほどんど件数が変わらない。
最近ではむしろ審判のほうが件数が多いくらいである(審判からスタートすることもあるのだろう)。
これらでは調停はまったく機能していないのではないか。
引き離しの件数の推定
面会交流の審判がなされるのは、調停が不調におわった後であろう。面会交流が子どもの権利と考えられている現状からすれば、
調停員は多くの場合、監護親の説得を試みたはずである。
そこで、この審判の新受件数は、
監護親の意思が堅く、調停員の説得が功を奏せず、
引き離しが継続しているケースの数と考えて、それほど大きな違いはないだろう。
その際に、監護者の指定や、子の引き渡しを同時に訴えることも考えられる。
おそらくそのために、これらの審判の数がおよそ一致して推移しているのだろう。
片親がこどもを一人で監護するのは、かなりの重労働である。
まして就労していれば、その困難さは明らかである。
連れ去り後の早い段階で、子どもと関わることを諦める親も相当数いることだろう。
そこで、この数は、連れ去りの発生件数の推定としては不適当である。
実際、離婚後に紛争が生じる乙7の数は、離婚数の3.3%ほどで一定している。
離婚後に虐待などの問題が発生・発覚する割合が一定しているからだろう。
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