2014年2月23日日曜日

子育て・被虐待児に何が起きるのか

深刻な影響

これに関して、実務家が調査して、実務家のために紹介している本を見つけました。
あいち小児保健医療総合センターの杉山登志郎先生(著)の
子供虐待という第四の発達障害
これ、本人に向けて書かれていないので、遠慮がなくて、
それだけにかなりショッキングな内容です。

杉山先生によると、被虐待児は以下のような症状を示すことが多いそうです。

  • 反応性愛着障害
  • 解離
  • 高機能広汎性発達障害
  • 多動性行動障害
やがてこれらが、
  • 解離性同一障害
  • 複雑性PTSD
といった症状を示すようになります。

杉山先生のところには、全ての被虐待児が連れてこられるわけではないはず。
精神症状を呈しているから運ばれてくるわけだから
(全ての被虐待児が精神症状を示すとは限らない)。
このバイアスはあるものの、
運ばれてきた子供の多くが被虐待児であったというのは注目すべきです。
被虐待児は、そうでない子供が起こさないような問題を抱える危険性がある。
その危険性の深刻さを考えれば、「虐待が子供に与えるダメージ」を
過小評価するわけにはいかない。

そして、何故にこれが深刻なのか、この本がショッキングなのか。
それは、虐待によって発達障害が引き起こされるということ。
ヒトの脳は、しかるべき時にしかるべき刺激がないと、ちゃんと形成されないんです。
で、その時を逃してしまうと、後からどうしても、まず無理。
この本にも、そうした脳の発達に関する研究結果が紹介されています。
最近はMRIみたいな、非侵襲性の測定装置がずいぶん発達しました。
そうした測定をすることで、より客観的な診断ができるようになってますし
より研究も進んでいるわけです。

で、脳そのもの、その構造にまで影響が出てくるということは、
もうカウンセリングでどうにかできる状況ではない、ということです。
何人かで手分けをして、薬剤もつかって、手探りしながら、
社会と折り合いがつけられる状態に持っていく。治るとか治すではなくて。
これがどんなにたいへんな作業なのかも紹介されています。

杉山先生は、そうした作業のことを「敗戦処理と言うひとがいる」と紹介します。
私もそうした学生さんの対応をしているとき、同じ感覚をもちます。
つぎ込んでもつぎ込んでも改善しない、砂漠に水をまくような無力感。
だからこの本の内容、すごく説得力があるのです。

そしてなにより大切なのは、そんなところまで放っておかないで、
もっと手前でケアしなければいけないということ。

裁判所も児童相談所も、
死にそうにない虐待は虐待として認めないという姿勢なのだとしたら、
(そうでないことを祈ってますが)
それはとんでもなく間違っています。

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