2014年2月28日金曜日

子育て・発達障害はなぜ深刻か

以前に書いたエントリーがいまいちわかりにくかったと反省。

脳の細胞の特殊性

人間の脳は、あらゆる動物の組織のなかで、すごく特異な性質を持っています。
複雑な器官でもある。いろいろに分化した細胞が、ドンピシャな組み合わせ方で
集まっています。

こういう複雑なもんを、われわれの限られた遺伝情報でくみたてるのって、至難です。
もちろん、こんな複雑なものの設計図はゲノムにはない。
ゲノムには何があるか? それは、せいぜい、それぞれの細胞の働きの設計図です。
細胞は、お互いに情報をやりとりしながら(オーガナイザーを出したり受けたり)
それぞれが行くべきところ、とるべきかたち、発現すべき機能を実現していきます。
当然、「学習」も重要です。なんもしないで放っておいて、
高次な機能を獲得することはできない。

幹細胞を用意しても、脳の一部だけをつくることは、たぶんできません。
これは、最初から全部をつくることしかできないんじゃないか。
何年もかけて。

ある程度に完成したヒトの脳は、とても大きくなるから、
ヒトの産道を通ることができません。
だからヒトの赤ん坊は、ああした未熟な状態で生まれてきます。
生まれたあと、がんばって作って行かねばならないのです。

だから、順番って重要なんですよ。
もう出来上がっちゃった回路は、組み換えがききません。
作られるべきときに作られなかった機能は、あと付けできないんです。
途中から目の機能を回復してあげても、
視覚情報を処理することができるようにならないから、
ちゃんと見えるようにはならない、たとえば。
いま背中に鳥のような翼をつけてもらったとしても、
操れないから、飛べるようにはならないです。

しかも、ヒトの脳細胞は、作られる期間がきまっている。
ある時期をすぎたら、もう増えない。あとは基本的には死ぬだけ。
海馬とか、ごく限られたところが、限られた増殖能しか持たない。
がんばれば覚えられた時期ってあったでしょ? 
あれは、そのときだけです。もう帰ってきません。
時期が重要なんですよ。

被虐待児の脳は、まともに生育できなかった部分を持ってます。
あるいは、ストレスの挙句、異常に亢進したホルモンの影響をうけて
死んで脱落したか変性して血管が萎縮したか、もう働かなくなった部分、
ということなのかもしれない。

脳の機能には可塑性があるから、そうした部分が本来受け持つべき機能を、
別のところが補えるかもしれない。でも、間に合わないかもしれない。
そして、間に合わないことのほうが多いのかもしれない。

私達が、ある種の学生に対して感じる無力感はここに起因してます。
手遅れという言葉が、こんなに若い子たちにこれほど似つかわしくない言葉が、
でも、ぴったりきてしまう。

TEDで、ジム・ファロンの講義をみてみてください。
彼も脳科学者で、犯罪者の脳に興味をもったのですが、
ある種の犯罪者に共通する遺伝子の異常が自らの家系にもあることを発見しました。
この遺伝子は、ホルモンの亢進のために、脳のある部分を弱らせてしまいます。
そこは共感を司る部分で、そのために、この遺伝子異常をもつ人は
連続殺人などを引き起こしやすくなると考えられます。

このひとはしかし、自分自身がその遺伝子異常をもつこと、そして
自分自身の脳のその部分が弱っていることを見つけました。

でも彼自身は幸せな結婚をしていて、家庭をもち、まともに研究者として働いています。
すんげえ良い大学の教授です(まあ、大学の教授って、人を食ったようなひとおおいですが。
シリアル・キラーはあんましいないと思う)。

なにがこれを可能にしたか? なぜ彼の頭脳のどこかが、失われた機能を肩代わりできたか?
それが教育。それが、親の育て。彼は親から、とても大切に育てられたのです。

その逆だってあるってことです。
遺伝子的には何の問題もなくても、
ひどい育てられ方をすれば、才能が開花しないどころか、
ぜんぶダメになってしまうことだってあるでしょう。
オオカミに育てられた少女は、もう人間にはなれないんですよ。

だから、まともな教育の機会を奪ってしまう、
人とのつながりを断ってしまう、連れ去りと引き離しは、深刻な犯罪なのです。
親だからって、自分の子供をそんな人間にしてしまう権利はもっていない。
まして、公的な機関が、そんな行為に手を貸してはいけない。
子供の権利を司法や行政が踏みにじることは、とても看過できない。

ごめんなさい、柄にもなく、偉そうなことを言ってるぞ。

ちなみに、最近は、対象を傷つけずに、
脳の構造や機能をかなりよく調べることができるようになりました。
殺しちゃってもいいんなら、もっといろいろ調べられるのですが、
それだと人間のは調べられないから。
だから、いま以下のような装置が脳科学の大きな戦力になってます。
遺伝子の関わりも調べられるようになりました。
ほんのいくつかの細胞があれば、そこで働いている遺伝子について
調べることができるようになっています。

こんな方法をつかって可視化します。やっぱ目で見えることって説得力があります。

脳の可視化・MRI

核磁気共鳴(NMR)をつかって、プロトンに歳差運動をおこさせ、
それが戻って行く過程を測定し、結果を画像化する方法です。
要は、体のなかにはいっぱい(水やらタンパクやら)プロトンがあって、
そこに強い磁気パルスをかけてやることで「磁化」させてやり、
それが消磁されていく過程を測ると。
プロトンがおかれている状況で消磁の過程はかわるから、
そこに位置情報とともに適当なコントラストを与えてやれば、画像になります。
これ、最近の3テスラのやつなんかだと、本当にくっきりばっちり
輪切りが見れるです。私もすげーたまげました。
ノーベル賞とっちゃうわけだよ、開発者。
でもまあ、その磁力をつくるために、液体ヘリウムで冷却とか、
すげえ電源とかは必要。
装置一式も数億円のオーダーになるんじゃなかったかな。

脳の可視化・PET

ポジトロン断層法の略。磁気ではなくて、すごく半減期が短い放射性物質を体にいれて、
そいつらがどこに行くのかを画像化する。
血流があれば、あるいは代謝が活発になれば、それを眺めることができるから、
たとえば刺激を与えたときに脳のどこが活発になるかを調べたり、
腫瘍が羽目を外していないかを見たりできる。
解像度はMRIよりはずっと劣るけど、
イマイマどこがどのくらい活発なのかがわかるのが意義。
ただ、ちょっとしたサイクロトロンがないと、その放射性物質を用意できない。
なんせ数分とかの半減期なので、輸送とか貯蔵ができないのだった。
だから装置一式は、さらに大掛かりになる。

脳の可視化・CT

コンピュータ断層撮影の略。X線をつかって連続的なスキャンをし、
その結果を3Dに再構成して画像を得る方法。PETと組み合わせることも。
あんまり柔らかい組織(脳はけっこうソフトだし)だと透けちゃって、
コントラストがつけにくいけど、解像度は高い。

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